現代のデジタル広告は、ターゲティングの精度や効果測定の容易さから多くの企業に採用されています。しかし、その普及は同時に情報過多の状況を生み出し、消費者は無意識のうちに広告を避ける「バナーブラインドネス」や広告疲れを起こしやすくなっています。このような背景の中、駅看板をはじめとするOOH広告は、日常生活のリアルな空間で消費者と接触できる貴重な媒体として再注目されています。
この記事では、浅草駅で10年以上にわたり広告を掲出し続ける老舗かりんとう店の事例を通じて、駅看板が持つ「認知」から「購買」へと繋げる力について分析します。
調査事例
本事例の効果を客観的に検証するため、以下の設計に基づいたオンラインアンケート調査を実施しました。
項目内容スクリーニング
調査は、まず関東在住の10,351名を対象としたスクリーニング調査から開始されました。この広範な母集団から、「浅草駅を半年以内に利用した」2,428名を抽出、最終的に534名を本調査の対象者としました。
調査期間は2023年9月28日から10月6日まで、オンラインアンケート形式で実施されました。
調査項目
主な調査項目は以下の通りです。
- 店舗認知: 当該かりんとう店を知っているか。
- 看板認知: 浅草駅で当該看板を見たことがあるか、または見た気がするか。
- 行動(来店・購入・検索): 看板認知後、実際に店舗を訪問したか、商品を購入したか、あるいはオンラインで検索したか。
これらの項目を通じて、看板広告が消費者の認知形成から具体的な行動喚起に至るまでのプロセスを段階的に検証することを目指しました。
調査設計概要
項目 | 詳細 |
---|---|
初期スクリーニング対象 | 関東在住10,351名 |
本調査母集団数 | 浅草駅を過去半年以内に利用した2,428名 |
本調査対象者数 | 534名 |
調査期間 | 2023年9月28日~10月6日 |
調査手法 | オンラインアンケート |
性別(本調査) | 男性 50% 女性 50% |
年齢(本調査) | 20代 21% 30代 19.7% 40代 19.1% 50代 20.2% 60代 20.0% |
都道府県(本調査) | 茨城県 2.4% 栃木県 2.2% 群馬県 2.2% 埼玉県 12.9% 千葉県 11.8% 東京都 50.2% 神奈川県 18.2% |
職業(本調査) | 公務員 3.9% 経営者・役員 3.0% 会社員(事務系)30.7% 会社員(技術系)17.2% 会社員(その他)11% 自営業 4.1% 自由業 3.6% 専業主婦(主夫)8.2% パートアルバイト 11.2% 学生 2.4% その他 4.5% |
未既婚(本調査) | 未婚 37.3% 既婚 62.7% |
子供の有無(本調査) | 子供有 54.9% 子供無 45.1% |
主な調査項目 | 店舗認知、看板認知、行動(来店・購入・検索) |
調査結果1: 6割超が店を知っていた
駅看板の重要な効果の一つは、ブランドや店舗の認知度向上です。
本調査では、調査対象者(浅草駅を半年以内に利用した534名)のうち、実に60%を超える人々がこの老舗かりんとう店を「知っている」と回答しました。
これは駅看板が店舗の存在を広く浸透させる上で大きく貢献していると言えます。
▼「老舗かりんとう店を知っていますか?」の回答結果
考察:長期掲出による「街の記憶」化
10年以上にわたる看板の継続掲出は、単なる広告露出の繰り返し以上の意味を持ちます。それは、このかりんとう店の存在を、浅草という街の風景の一部、あるいは「街の記憶」として人々の意識に刷り込む効果を生み出していると考えられます。
長期間にわたるブランド広告は、消費者の心の中にブランドへの愛着や親近感を徐々に蓄積していく効果があるとされています 。
このかりんとう店の看板も同様に、日々の通勤や観光で浅草駅を利用する人々にとって、いつもの場所にあるお馴染みの存在となっている可能性があります。それは、意識的に広告として認識される以上に、無意識のレベルでブランドへの親近感や信頼感を醸成しているのではないでしょうか。
調査結果2: 看板を「見た/見た気がする」人も6割超
調査対象者のうち、60%を超える人々が、浅草駅でこのかりんとう店の看板を「見た」あるいは「見た気がする」と回答しました。この数値は、前述の店舗認知率(約60%超)とほぼ同水準であり、店舗認知の形成に駅看板が大きく関わっている可能性を示唆しています。
この高い視認率の背景には、看板の設置場所が寄与していると考えられます。看板が駅の主要な乗り換え通路に設置されていることは、多くの乗降客が日常的にその前を通過することで、自然と目に触れる確率が高まるのです。
▼「東京メトロ浅草駅にある看板を見たことがありますか?」の回答結果
調査結果3: 認知者の87%が何らかのアクションを起こした
広告の最終的な目的は、認知を高めるだけでなく、消費者の具体的な行動を促すことです。
本調査では、看板を見た、あるいは見た気がすると回答した人のうち、実に87%もの人々が、その後何らかの関連行動を起こしていました。
具体的な行動内容は以下の通りです。
看板または店舗認知後の行動(認知者ベース)
看板または店舗認知後の行動 | 行動した人の割合(認知者中) |
---|---|
店舗を訪れたことがある | 約51.3% |
店舗を訪れて商品を購入したことがある | 約50.2% |
ネットで調べたことがある | 約34.1% |
オンラインストアで商品を購入したことがある | 約14.2% |
あてはまるものはない | 12.1% |
看板を見て、店舗を訪れたり商品を購入したり、ネットで検索など行動した人が約87%。看板を認識している人と購入層に明確な相関関係がありました。
成功要因となった3ポイントを分析
この老舗かりんとう店の駅看板が顕著な成果を上げている背景には、いくつかの重要な成功要因が複合的に作用していると考えられます。
ここでは、特に注目すべき3つのポイントを分析します。
ポイント1: 出稿場所選定
第一の要因は、広告媒体としての浅草駅の卓越した特性です。浅草駅は1日平均12万人を超える乗降客数を誇り、国内外からの観光客と地域住民・通勤客が混在するユニークな環境です。
この多様なオーディエンス構成は、広告にとって大きな利点となります。観光客に対しては、浅草ならではの土産物としての「発見」や「衝動買い」を喚起しやすく、一方で地域住民や通勤客に対しては、日常的な反復接触を通じてブランドへの親近感や信頼感を徐々に醸成し、想起率を高める効果が期待できます。
このように、異なるターゲット層に同時に、かつ効果的にアプローチできる駅の選定が、成功の基盤となっていると言えるでしょう。
ポイント2: 長期間の掲出
第二の要因は、10年以上という長期間にわたる継続的な広告掲出です。これは、短期的な広告効果とは異なる、より深く持続的なブランドへの影響をもたらしています。長期間のブランディング広告は、消費者の心の中にブランドへの愛着や好意を時間をかけて蓄積させる効果があり、これがブランド資産の構築に繋がるのです。
このかりんとう店の看板は、まさにその好例であり、長年の掲出によって浅草駅の風景の一部として溶け込み、多くの人々にとって馴染み深い存在となっています。
ポイント3: 店頭・EC連携
第三の要因は、オフラインの駅看板広告がオンラインの行動へと効果的に連携している点です。前述した調査結果3が示すように、看板を認知した人々の一部は、その後オンラインで店舗や商品を検索しています(約14.2%)。
看板を通じて店舗名が記憶されていれば、消費者は一般的なキーワード(「浅草 土産」など)ではなく、具体的な店舗名で検索する「指名検索」を行う可能性が高まります。
指名検索は、購入意欲の高いユーザーによる行動であり、最終的な購買率も高い傾向にあります。また、有料検索広告(PPC)においても、指名キーワードは比較的安価に入札できる傾向にあるため、広告費用対効果の向上にも繋がります。
このように、駅看板は単にオフラインでの認知を獲得するだけでなく、質の高いデジタルトラフィックの「呼び水」としての役割も果たしているのです。
駅看板が起点となり、オンラインでの情報収集やECサイトでの購入、あるいは実店舗への再来店といった、複数チャネルに渡る顧客行動を促進するのです。顧客の購買行動における重要な最初のタッチポイントとして駅看板が機能していると言えます。
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