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アンブッシュ・マーケティングとは

公開日公開日:2023.06.05

更新日更新日: 2024.08.14

この春、日本ではWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で大いに盛り上がり、日本代表が見事に優勝しましたが、このようなスポーツの国際大会の盛り上がりの裏で、必ず目にするのは様々な「経済効果」についての記事です。

今回のWBCで日本が優勝した場合の国内における経済効果は600億円とも言われていますが、侍ジャパンを運営しているNPB(NPBエンタープライズ)へ還元されるわけではなく、大半はワールドベースボールクラシックの大会運営を手がけるアメリカの会社「WBCI(WORLD BASEBALL CLASSIC INC)」が得る構図となっているそうです。

WBCでは、チケット代、スポンサー契約料、放映権料、グッズの肖像権料などの総収入から、分配金が各国に支給されるそうですが、収益などについては非公表としていて、経営面も不透明、日本がWBCの収益に多大な貢献をし続けている割には、NPBの負担と分配のバランスが明らかに不公平だと言われています。


このような経済効果の話の中で、やはり気になるのは、広告に関しての部分になりますが、今回のWBCや、オリンピックなどの世界的な大会が開催される際に、「アンブッシュ・マーケティング」という言葉を耳にしたことはありますか?

「アンブッシュ・マーケティング(ambush marketing)」とは、世界的な大会や著名なイベント等について、公式スポンサーではない企業が、あたかも公式スポンサーであるかのように生活者に誤認させ、物販や集客を行うことです。


世界的な大会やイベントの多くはエンブレムやシンボル、マスコットなどを設けていますが、これらは知的財産であり、大会に認められた組織・団体・スポンサーや自治体などの事業者以外が使用することはできません。

たとえ「大会を盛り上げたい」という純粋な考えであったとしても、第三者が大会やイベントのロゴ、フレーズなどを無断使用すると、法律や規則に違反する可能性があります。

また大会ごとに、主催組織や団体がアンブッシュ・マーケティングを定義づけ、故意であるか否かを問わず、その行為を規制していることが多いため、意図せずアンブッシュ・マーケティングを起こさないように注意しなければなりません。


そのような厳しい規制がある中で、2018年の「FIFAワールドカップ ロシア」において、面白い事例を見つけました。

某自動車メーカーが、オフィシャルスポンサーではないにもかかわらず、巧みな手法で自社のプロモーションを行うことに成功した、というものです。

W杯の組み合わせ抽選会に際して、抽選結果をロシアのスポーツメディアサイトへバナー広告として生配信し、各国のサッカーファンの関心を集める広告となったそうです。


広告の内容は、最初のバナーでは、ロシアのサポーターと思わしき男性が車の運転席に座っている姿から始まり、組み合わせ抽選会でロシアの対戦国が発表されていくたびに、その国をイメージさせるサポーターが助手席と後部座席に座っていく、というもの。

ただし、事前にどの国と対戦するかは分からないため、ロシアが対戦する可能性がある国の全てのパターン(589通り)を用意し、綿密な準備が行われていたそうです。

また、リアルタイムにバナー広告のデザインを更新するために、特別なソフトウェアも導入されていたとのことでした。


最終的にこのバナー広告は、大きく拡散し、大成功を収めたようですが、なぜこの広告が、W杯のオフィシャルスポンサーではないにもかかわらず「アンブッシュ・マーケティング」と判断されなかったのでしょうか。

その理由は「World Cup」という言葉や公式のロゴを使用せず、各国代表のサポーターを掲載するという形でW杯を想起させていて、権利の問題をうまくかいくぐっていたから、だそうです。

そして大会同様に人々が注目する組み合わせ抽選会を利用し、ロシアで最も大きなスポーツメディアにバナー広告を掲載するなど、人々の関心を集めるための工夫がされていて、そうした点から、公式スポンサーでなくても、そのチャンスを巧みに活用し、非常に優れたアンブッシュ・マーケティングの事例と言われているそうです。


もしも、権利に反したマーケティングをしてしまうと訴訟や炎上につながる可能性もあり、リスクも高いため、この事例のような広告を掲載することは難しいと思いますが、他の企業との差別化を図る上では重要なマーケティング手法だとも言われています。

スポンサーになれる資金がない、選手のスポンサーだが大会のスポンサーではないため活発に動けない、そうした状況の企業こそが、攻めの姿勢で頑張って欲しいものです。


この事例のように、世界中で話題になるような広告を掲載することが、広告に携わっている者にとっての夢ではないでしょうか。

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