公開日:2021.10.11
早いもので、広告業界というお風呂につかってはや30年!!
広告といっても地味な紙媒体が中心だったのですが。
時は平成元年。バブル景気も終焉を迎えつつある中、ベルリンの壁が崩壊したまさにその年です。
当時の広告制作(紙モノ)は超絶アナログで、とにかく時間と労力がハンパなかったのを今でも覚えています。
今でこそデザイナーが入稿データまでを作るのが当たり前ですが、私が新入社員の頃は完全分業制で、今でいう入稿データを当時は版下と呼んでいました。
版下を簡単に説明すると、印刷機に通すフィルムの原版のことを言います。
版下を作る工程としてまずはデザイナーが手書きでデザイン画を作成。
デザイン画には文字原稿も含まれていて、ワープロで印刷したものを手書きのデザイン画に貼っていたような気がします。(このあたりはうろ覚えです。)
今でいうところのサムネイルです。
完成した昔版サムネイルを文字と文字以外に分解。
文字原稿は写植オペレーターが文字組み後印画紙に出力。
文字以外のすべて(例えば写真やロゴなど)は紙焼きの得意な人が紙焼き機で印画紙に出力します。
紙焼きは地味にめちゃくちゃ重労働なんです。
そして結構熟練技で縮小拡大も「感」に頼ります。
余談ですが、縮小拡大でかなりの失敗作が増産されます。
これを捨てないのが実は重要で、結構な確率で後の作品に使われます。
それぞれで出力した印画紙を1枚の厚手の紙に配置していきます。
この時重要なのがトンボです。
ちなみに、版下を作成するのも写植オペレーターの仕事でした。
しかも当時の版下はモノクロです。
=>現在はDTPソフト(Adobe社が圧倒時シェア)でサクサク制作!しかもデータ内でCMYKに分解されるのでカラーです!!
完成した版下はコピーして校正をします。
この工程は今でも同じですね。
しかしながら、その後の修正がとにかく大変。
今は全体のデザインを見ながら文字修正をするため文字間隔を調整したりフォントを小さくしたり出来るのですが、当時は分業制のため文字修正の場合は、文字だけ修正です。
出力した文字パーツの印画紙を版下に貼りこんだら、「罫線からはみ出る!」なんてことも日常的に起こります。
校正→修正→印画紙出力→版下貼り込み→確認
この工程がページものだと無限ループ。
写植オペレーターとの校正キャッチボールもブラックホール。
「先が見えない~!!」という状況でした。
当時はインターネットも普及しておらず写植屋に宿泊付き出張校正。
写植オペレーターも時間の経過とともに怖くなるので、出力した印画紙を、私が版下にピンセットで貼ったものです。
二つの三角定規を駆使して・・・・・。
ちなみに、二つの三角定規で直角を作ると真っすぐに貼れます。
こうして完成した版下の上に、トレーシングペーパーをかけ色指定などをしていきます。(これはデザイナーの仕事)
色指定をした大事な版下は製版屋に持っていき、CMYKのフィルムに分解してもらいます。
この段階が修正の最後の塞です。
フィルムを紙に出力(青焼き)してもらい、微小の修正があった場合は製版屋でストリップします。
そして印刷機へ!!
=>現在、版下は存在しません。
入稿データからフィルムを出力します。
インターネット・DTPの普及で、作業工程は感覚的に1/4くらいまで圧縮されたような気がしますがデジタルメディアの台頭とともに紙メディアが縮小傾向なのは 寂しい限りです。
そんな今だからこそ原点回帰!
紙の種類は圧倒的に今のほうが豊富です。
布のような紙質、金属のような紙質などなど。
紙質にこだわり、デジタルメディアには絶体に不可能な触感へのアプローチが可能です。
(コロナが終息してからでしょうか)
「昔は~」とか、具体的な紙メディアの活用方法など、どしどしお問合せください。
お問い合わせはこちらちなみに、今でもたまに当時の夢を見ます。
写植屋さんで夜中にかつ丼を食べている夢、版下を電車の中に忘れる夢、今ではいい思い出です。
企画部 watanabe